The Fragile #4 | Tomorrow Never Dies : 20000201
あなたは「The Fragile」をどういう意味だと受け取ったろうか。
『壊れやすいもの』とはトレント・レズナー自身または彼の心を指すのだと、大抵の人は思っただろう。しかし、意外なことにトレント本人が「The Fragile」が指すもの、に対して出して来た言葉は自身に関することだけを指すものではなかったのだ。「いつどんな瞬間にも何だって死にうるし、壊れてしまうと言うことを形にしたかった」。
それはあらゆるもの、自身を含む、存在する全てのもの。『壊れやすい』とは『永遠ではない』と言う意味だったのだ。例えばそれは人との関係であろうし、誰かや何かに抱く愛情や感情だろう。そして、存在する物体でもあり、広範囲に言えば命をも指す。
そう言ってしまうと「しょせん世の中は永遠ではないのだ」と言う解釈になってしまうが、このアルバムが指し示している、トレントが今彼の人生に対して持っている姿勢は違うと思う。
その姿勢を表す曲が「We’re In This Together」ではないかと思うのだ。
ここに出て来る「俺(Me)」と「おまえ(You)」は、聴き手とトレント、はたまたトレントと誰か、とも受け取れるが、私はこれは両方ともがトレントなのではないかと思う。そう、「ファイト・クラブ」のふたりのように。そして「ここ(This)」とは「トレント自身」なのではないだろうか。つまり、この「ふたり」は、トレントの暗部と明部、またはトレントの過去と現在、と言うことだ。
これは以前話に出したこのアルバムを支配する「対立する二つの存在」の一部とも言える。
「俺は自分のカルマを受け入れたんだ」とトレントはインタヴューで語っているが、「カルマ」とはもはや自分の手や人の手、外部も内部も含めた全ての力でもってしても拮抗できない、ある種の生まれ持ったもの、と言える。そして、私はこのトレントの「カルマ」とは、トレント自身で例に挙げるなら「スーパースターに憧れてついにその地位に立った人間の奢り」だし「セレブとして扱われることに快感を持ってしまう」…などの、誰もが持つであろう人間的な暗部を指しているのではないかと思った。
その人間的な暗部にほとんど支配されてしまって音楽をやることすらが苦痛だったトレントは、自分の暗部に姿形をあたえ、正視して対峙することを決意したのではないだろうか。…これは彼の自分に対する癒しでもあると思う。実際に「これまでなかったくらいしんどいやり方で自分に挑戦すること」が、自分の癒しなのだ、とトレントは語っている。
避けるのでも殺すのでも無視するのでも恐れるのでもなく。受け入れて消す。存在を認め、対立することでお互いを御することにしたのではないかと思う。
その様子が「We’re In This Together」ではないのだろうか。
この曲を「The Day The World Went Away/Starfuckers, Inc.」のカップリングの後にリリースしたと言うことにとても意味があるような気がする。「The Day The World Went Away/Starfuckers, Inc.」を過去の清算なのだとしたら、「We’re In This Together」こそは現在のトレントの方向を指し示しているように思う。確かに「俺(Me)」と「おまえ(You)」はトレントとファンのことにも受け取れるし、新しい世界に導かれる気がして、ファンとしては「ああ、帰って来た」と言う気持ちがつのる。しかし、これはトレントの目指す方向とも受け取れるのだ。
だから、あの孤独感のただようラストシーンを持つ「We’re In This Together」のビデオ・クリップは、不思議と私にはそんな彼の『自分の弱さと言うものを全て受け入れて、一人になってもなお、立ち向かって歩いて行く』と言う意思表示に見える。あの曲はいつも私に新しい力を与えてくれる。私も彼のように、果てのない冒険に出よう、生きて行こう、と思えるのだ。さあ、立ち上がろう、ここで立ち止まってはいけない、と。
訪れるのが当然の明日。でも、明日は、もしかしたらないのかも知れないのだ。
今から数時間後に、自分と言う存在がなくならないとは誰にも言えない。誰もがその不安を持っている。永遠と言うものがないのならば、命があるかぎり作り上げ続けるしかない。そうして彼は寝る暇もなく人々に生の自分とこのアルバムの力を見せるために旅する。完璧な1時間あまりのために、その数倍もの努力をして見せる。彼は今、自分の仕事を本当に愛しているんだと思う。
そんな、人生と言うものに対するタフな精神力を、私は「The Fragile」の中に見ている。
そして、トレントは今、こんなにも切なく力強い気持ちで生きているのだ、と感じる。
「The Fragile」とは弱さを受け入れた彼のことでも、弱い彼自身でもない。また、彼の諦めを意味するものでもない。自分を含めた全てのものと、生きている一瞬一瞬を愛し、懸命に生きる気持ちのことなのだ。彼がこんなにも今、自分と自分の人生を大切にしてくれている事実が、私はとても嬉しい。
だからこそアルバムを聴く度に思う。「さあ、がんばって生きよう、明日と言う日はないかも知れないのだから」。私の明日が必ず来るなんて、誰にも断言はできないのだ。だから。










































